健康コラム

【健康百話】第18話 "タバコ"について 

呼吸器内科医師  渡邊 麻莉 医師




"タバコ"について、皆さんはどのようなイメージをお持ちですか?
 約10年前は、CMなどで男優がタバコを吹かしている姿から、かっこいいなどの印象をお持ちの方、多かったのではないでしょうか、
 そんな折、新幹線全席禁煙、飲食店内での分煙、歩きたばこの規制、たばこ税の引上げなどを通して、昨今タバコの害について多く知られるようになってきました。
今回はそんな"タバコ"について少しお話したいと思います。

タバコはナス科の植物で、中南米が原産といわれています。古代マヤ文明の壁画にもたばこが描かれていることから、驚くことに1400年前にはすでに喫煙習慣があったと考えられます。
我が国には16世紀前半にポルトガル人によってもたらされ、徐々に広まってきたわけです。現在、日本では男性39.5%、女性12.9% 男女計25.7%の成人がタバコを吸っているとされています(2008/5月JT調べ)。我が国を含めた先進国では年々喫煙率は低下していますが、まだまだ多いのが現状です。




『タバコはストレス解消や眠気覚ましになるから、止められない』
タバコを好む人がよく口にする言葉です。ではなぜタバコを吸うとヒトは快感を覚えるのでしょう。それはタバコに含まれるニコチンによるものです。 ニコチンが脳内の受容体に結合し、ドパミンというホルモンが放出され、一時的な快感を生じます しかし、このドパミンは1時間もすると尿中に排出されてしまうため、またすぐにタバコを吸いたくなってしまいます。これが、タバコが生み出す恐ろしい "習慣性" "依存症" なのです。


ヒ素、カドミウム、トルエン、ホルムアルデヒド・・・これらはカーバッテリーや工業溶剤に使われるもので、普段接することはない、と皆さん思っていらっしゃるのではないでしょうか。なんとタバコにはこれらが含まれるのです。
タバコの3悪は『タール、ニコチン、一酸化炭素』に代表されますが、実は タバコの煙には200種類以上の有害物質、60種類以上の発癌物質が含まれます。



健康への影響を調査した結果では、アルコール、高血圧、大気汚染などよりタバコの影響が最も大きいと言われています。さらにタバコによる死亡者数は世界で年間500万人とされ、日本では2000年に11万4200人に達しています。

タバコによる病気として最も知られているのは "肺癌"です。その他、喉頭癌、咽頭癌、食道癌、膵臓、肝臓など多くの癌と関連しています。
癌以外では、虚血性心疾患、脳血管障害、COPD(肺気腫)、糖尿病、胃潰瘍、慢性肝障害、骨病変など全身に影響するといわれており、さらにアルツハイマー、聴力・視力障害・歯周病といった疾患もタバコの影響があると報告されています



受動禁煙は癌、心臓病、脳卒中のリスクとなることが証明され、子どもに対しても乳幼児突然死症候群、気管支炎、喘息などを引き起こすことが分かっています。
『換気扇の下やベランダで吸っている』から大丈夫、とおっしゃる方もいるかもしれませんが、実はこれには効果がほとんどないのです。 "家の中でタバコを吸った母親" と "家の中ではタバコは吸わない母親" で子ども毛髪中のニコチン濃度を測ったところ、差がなかったという報告があります。結局のところ、いくら換気扇の下やベランダで喫煙したとしても窓や喫煙者の息、手などを介して室内にタバコの有害物質が持ち込まれてしまうのです。
また、車内で窓を閉め切ってタバコを吸うという行動は、かなり危険なことです。運転席の窓だけを開けてタバコを吸うという行動も同様です。車内の空気は最悪のレベルに達し、なんと死亡するリスクが数10%高まるとされています。
つまり "分煙" でなく "禁煙" がもっとも大切なのです。




1日1箱(300円とする)吸っている人ですと、3ヶ月で2万7000円(温泉旅行)、半年で5万4000円(スーツを新調)、1年で約11万円(家電買い替え!)、5年でなんと約55万円(海外旅行!!)がタバコに消えます。



これまでタバコの恐ろしさについて、たくさん述べてきました。ここまで重大な病気やリスクを並べられると、これをお読みになっている喫煙者の方の中には、絶望的な気分になった方もいるかもしれません。確かに、タバコは多くの病気の原因となるもので、タバコをやめたからといって、壊れた肺がすっかり元に戻るわけではありません。
しかし、禁煙後 10〜15 年でほぼ非禁煙者の死亡リスクに戻るといわれており、特に心疾患に関しては禁煙5年で非喫煙者と同等までに死亡リスクが下がると言われています。
"今" からでも決して遅くはない!のです。

 とはいっても、"タバコの害は十分に分かっているけれどやめられない"という方は多くいらっしゃると思います。(先ほど述べた依存症、習慣性の影響です。)当病院では平成21年4月より禁煙外来を設置し、そんな方々のお手伝いをしています。
当院の禁煙外来で行っていることをご紹介しましょう。
 禁煙治療薬にはニコチンガム、ニコチンパッチといったものが代表的ですが、2006年にバレニクリン(チャンピックス )という飲み薬も保険適応となりました。
 当科では、まずは禁煙する動機を含め、患者さんからお話を聞きます(問診)。
次に、呼気一酸化炭素濃度を測定していただきます。禁煙に成功すると、数時間で正常レベルに戻ります。そして、タバコのリスクについて十分にご理解頂いた上で、お薬を出します。
 先ほどご紹介したチャンピックスと言う薬は2006年から保険適応となったわけですが、適応となるには一定の要件があります。


ニコチン依存症を診断するテストTDS(Tabacco Dependence Screener)で5点以上

(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上

一か月以内に禁煙したいと思っている

医師から受けた禁煙治療の説明に同意

以上4項目を満たした場合、 "ニコチン依存症" と診断され健康保険が適応されます。(TDSを添付しましたので、みなさんもチェックしてみてください)
禁煙治療を開始された方は、計5回(12週)通院していただき、ゴールとなります。
なお、 禁煙治療の総額は2〜3万円です。タバコを続けるより、ずっと経済的です。

当外来では 現在、成功率は約80%です。
『タバコをやめたいけれどやめられない』そんな方は、ぜひ一度当科にご相談頂けたらと思います。


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ファイザー株式会社 ニコチン依存症 より

ファイザー株式会社 禁煙手帳より

渡邊 麻莉(わたなべ まり)



出 身 地   新潟県新潟市
最終学歴  山形大学医学部卒業
職  歴  平成20年 済生会山形済生病院入職


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