健康コラム

【健康百話】第26話 不妊症〜子どもが欲しいと望むあなたへ〜

不妊症看護認定看護師 宍戸 由紀子

 
 
 結婚をしたら「子どもがいる明るい幸せな家庭を築きたい」と望まれる方がほとんどです。子どもが欲しいと望んで、避妊をしない通常の性生活があれば、1年以内に80%、結婚後2年以内には90%が妊娠します。しかし、結婚したご夫婦のうち10組に1組は、子どもが欲しいと望んでいてもなかなか授からない「不妊症」のご夫婦と言われています。女性の年齢や、ご夫婦の希望にもよりますが、妊娠を望みながら、なかなか妊娠できないと感じている方には、一日も早く専門医の受診をお勧めいたします。

<不妊の原因>
 なかなか妊娠できない背景には、いろいろな原因が隠れていることが多いです。女性だけに不妊原因があると思われがちですが、不妊原因の半分は男性側にあります。原因がわかれば、ある程度治療方法について情報提供をすることができます。不妊原因を調べないまま治療を何年も行って、いざ検査を行ってみたらはっきりした原因があったという事例も少なくなくありません。大切な時間を無駄にしないためにも、不妊治療を開始するときは、ご夫婦で検査を始めていただくことをお勧めしています。しかし、いくら検査を行っても、現代の医学では不妊原因を解明できない原因不明の不妊症が大半を占めているのが現状です。

<不妊になりやすい生活習慣>
 第1の不妊原因となる生活習慣は喫煙です。これは、活性酸素の影響で卵子や精子へ悪影響をもたらすことがわかっています。女性の場合は閉経を早めてしまうこともわかってきました。また、肥満や痩せなどはホルモンバランスの異常をきたしやすくなります。妊娠に向けて、日常生活の見直しが必要となります。

<不妊治療>
 不妊治療には3つのステップがあると言われています。30代前半女性が不妊かな?と思って初めて医療機関を受診する方の例をもとに治療の流れを説明します。
第1ステップは、不妊検査及び排卵期のチェックによる性交のタイミング指導です。
不妊の検査として、ホルモン検査、卵管造影検査、精液検査、クラミジア検査、超音波検査などがあります。それと並行して、超音波検査で卵胞発育を確認し、排卵の時期の目安をつけて性交のタイミングを指導するタイミング法を行っていきます。この治療法での妊娠率は約5%です。この期間には約1〜3ヶ月ぐらいの期間が必要となります。
第2ステップは、卵巣刺激を行って卵胞を発育させ、人工授精を行う治療法です。タイミング法より妊娠率が上がり、妊娠率は約8%です。人工授精で妊娠される方は治療1〜3回目までに妊娠することがほとんどで、6回以上繰り返しても妊娠率は上がらないと言われています。この治療期間は約3〜6ヶ月が目安となります。人工授精は自費診療となるため、金銭的な負担をしていただかなければなりません。
第3ステップとして、高度生殖補助医療、一般的に体外受精と言われる方法で妊娠に向かう方法があります。治療内容は、卵巣内で卵胞を発育させ、成熟した卵胞を採取し、体外で精子と受精をさせて、細胞分裂した受精卵を子宮内に戻すという方法です。また、一般的な体外受精での受精が困難な場合には、卵子に精子を1匹注入して受精をさせる顕微授精という治療方法もあります。体外受精での妊娠率は、年齢によって大きな差があり、35歳までは、妊娠率が約30%、39歳で18%、44歳以降は10%以下となっています。(図1参照)検査や治療を開始してなかなか妊娠が難しい場合や、自然妊娠が困難な原因がある場合には、初めて不妊症かな?と思って受診を開始して、約1〜2年後には第3ステップにすすむことが多いようです。体外受精の治療は、自費診療となるため、全額自己負担となりますし、使用する薬剤も多く、手術操作も加わるためリスクも高いので、治療を受ける前には十分な説明を聞き、その治療法に納得してから治療を受ける必要があります。

図1 日本産科婦人科学会HPより(ARTとは体外受精を含めた高度生殖補助医療)

<検査や治療を受けるのか、受けないのか>
 結婚をしたら必ずしも子どもがいなければならないわけではありません。ご夫婦が不妊かな?と思った時に、検査や治療を受けて子どもを授かりたいと考えて、初めて医療機関へ訪れることとなります。検査や治療が始まれば、痛みを伴うことも多く、生殖というご夫婦ふたりだけのことに、第三者である医療者が介入することとなるので、精神的負担も大きくなります。また、検査や治療を行えば不妊原因が明らかになりますので、ご夫婦の関係性に影響を及ぼすこともあります。不妊治療には、ご夫婦の強い愛情と絆があるからこそ、治療を行えるのではないかと感じています。

<医療者ができること>
 不妊治療には、様々な選択肢があり、私たち医療者は、不妊の原因やこれまでの経過から、どんな治療法を選んでいただけるのか情報提供を行っています。それらの情報から、ご夫婦で相談していただき、治療方法を選択していただく支援も行っています。そして、選択された治療法が、結果へと結びつくための医療的支援を行っています。また、治療に対する不安を十分にお聞きし、治療方法や通院方法など、身近なご相談にもお応えしております。

<治療を終えるとき>
 子どもさんを無事に抱いて治療が終了する方もいますが、子どもを得られずに治療を終結される方もいらっしゃいます。その場合、夫婦二人での生活を選ぶ方、養子縁組を希望される方、第三者からの提供を受けて妊娠を希望する方もいます。どんな結果になっても、治療を行ったことを、頑張ってきて良かったと受けとめていただけるような不妊治療を受けていただきたいと思っています。特に女性の場合は、これからの人生を健康に過ごしていくための健康管理の支援などを通して、医療機関とは長い付き合いになります。健康な生活を続けていくためのサポーターとして、みなさんに寄り添っていきたいと考えています。

 宍戸 由紀子(ししど ゆきこ)



出身地  山形県山辺町
最終学歴 聖路加看護大学看護実践開発研究センター
     認定看護師教育課程 不妊症看護コース 卒業
職 歴  平成2年4月 済生会山形済生病院 入職
資 格  日本看護協会 不妊症看護認定看護師
     日本アロマセラピー学会 アロマセラピー認定看護師


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