健康コラム

【健康百話】第4話  高齢者大腿骨近位部(頚部)骨折について

整形外科  玉木 康信 医師
 

 
骨密度減少(骨粗鬆症)と有意な関係が認められたのは、大腿骨近位部骨折、手関節部骨折、脊椎椎体骨折、上腕骨骨折、肋骨骨折、骨盤骨折、下腿骨骨折など高齢者に発生する骨折のほとんどであり、骨密度減少が危険因子とされています。高齢となり骨粗鬆症が進行すると、これら多くの骨折が発生する危険性が上昇しますが、大腿骨近位部骨折はその中でも患者数が多く、ほとんどの症例で手術を要し、患者の活動能力や生活の質に与える影響が大きく、また生命の危険にも直結しやすいものです。高齢が故に手術は難しく、寝たきりの生活となる可能性も高く、一旦寝たきりとなれば本人はもちろんのこと介護者の負担(肉体的、経済的)も大きくなります。このように高齢化社会の進行とともに、わが国において大腿骨近位部骨折が加速度的に増加し、経済的、社会的に大きな問題となっています。

大腿骨近位部骨折の骨折型

内側骨折と外側骨折に分類されます。内側骨折は関節内骨折であり、解剖学的理由により骨折部に骨折治癒機転が働かず、骨癒合率が低く、骨壊死の発生率も高いとされています。外側骨折は関節外で起こり、内側骨折に比べ骨折治癒の条件はよいとされています。受けた外力は内側骨折より強いことが多いとされています。

外側骨折に対する骨接合術の一例

内側骨折に対する人工骨頭挿入術の一例


高齢者大腿骨近位部骨折の疫学


過去、整形外科有床診療所を対象として行われた調査によれば1998 年、1999 年、2000 年にそれぞれ 36,226 例、40,069 例、34,452 例が登録されています。これらの年齢階級別の全患者数は80-84 歳が最多であり、80 歳代が全体の半分を占めます。発生率は 50 歳以下では男女ともに人口 10 万人あたり 10 以下と発生はごくわずかであり、60 歳以上で徐々に発生率が増加し、70歳以降に指数関数的に上昇します。75-79 歳では、女性で 360-480(年間人口 10 万人あたり)、
80-84 歳では 700-1,000、85 歳以上では 1,500-2,000、さらに 90 歳以上では 3,000 以上に達するとされています。
諸外国と比較すると、発生率は北欧や米国での発生率の 1/2-1/3 とされています。アジア人での発生率は、北欧や米国の白人より明らかに低値で、米国内でもアジア系民族では白人より発生率が低いと報告されています。しかし、地域や人種によって発生率にばらつきがあり、近代化と都市化が進んだ地域ほど発生率が高いことが指摘されています。わが国の人口は今後も高齢化が進み、老年人口(65 歳以上)のピークが 2043 年頃と推測されています。大腿骨近位部骨折患者数も 2040 年まで増加の一途をたどることが予想されています。現在の年齢階級別発生率と将来人口推計に基づくと、現在年間約 10-11 万例発生している大腿骨近位部骨折患者が 2030 年には 2.3 倍になると予想されています。



日本の将来推計人口に基づいて,現在の性・年齢階級別発生率から算出した年間発生患者数


諸外国と比較すると、発生率は北欧や米国での発生率の 1/2-1/3 とされています。アジア人での発生率は、北欧や米国の白人より明らかに低値で、米国内でもアジア系民族では白人より発生率が低いと報告されています。しかし、地域や人種によって発生率にばらつきがあり、近代化と都市化が進んだ地域ほど発生率が高いことが指摘されています。わが国の人口は今後も高齢化が進み、老年人口(65 歳以上)のピークが 2043 年頃と推測されています。大腿骨近位部骨折患者数も 2040 年まで増加の一途をたどることが予想されています。現在の年齢階級別発生率と将来人口推計に基づくと、現在年間約 10-11 万例発生している大腿骨近位部骨折患者が 2030 年には 2.3 倍になると予想されています。


 受傷場所、原因

受傷場所は屋内が約 70% を占め、80 歳以上の高齢者では屋内で受傷する割合が 85% とさらに高く報告されています。生活時間の長さを反映して居室や廊下での受傷が多く、トイレ、台所、玄関、浴室での受傷も報告されています。また、受傷原因は立った高さからの転倒が 74% とされています。転倒理由として、「身体がふらついた」が最も多く、「滑った」、「平地でつまずいた」、「段差、コードにつまずいた」が挙げられます。

生命予後

生存率は患者背景に大きく影響されますが、1 年以内の死亡率は 12.8% と報告されています。
1年生存率が 87%、3 年生存率が75% とされる事実は、本骨折がいかに人生の最後に起こる外傷であるかということを示しています。死亡原因は、肺炎、悪性腫瘍、心不全、腎不全などであり、人為的に改善が難しい要因と思われます。

治療

高齢者骨折治療の原則である早期離床、早期日常生活復帰を得るという観点から治療が行われます。わが国では全体の 94% で手術療法が行われています(死亡原因の肺炎は早期手術、離床により予防できる可能性があります)。

発生予防策

大腿骨近位部骨折に限らず、高齢者の骨折の 90% が転倒をきっかけに発生しています。このことから骨折予防の第一歩は、まず転倒しないことといえるでしょう。そのためには、室内環境(バリアフリーの環境、階段、廊下への手すりの整備、安定した靴と杖の使用、浴室には滑り止めのマットを使用するなど)を整える、筋力低下や視力障害などの改善も必要となるかもしれません。
骨粗鬆症の治療、運動療法、転倒した際の衝撃を緩和する大腿骨頚部転倒時防護パンツ(ヒッププロテクター)の着用なども考慮する必要があります。








参考文献
整形・災害外科44(7)、2001
整形・災害外科45(7)、2002
関節外科23(12)、2004

玉木 康信 医師


昭和49年生まれ
出 身 地  静岡県
最終学歴   山形大学医学部卒業
職 歴   平成18年 済生会山形済生病院入職
専 門 医  日本整形外科学会専門医


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