健康コラム

【健康百話】第40話 「腰痛について」

 

はじめに

平成25年国民生活基礎調査(厚生労働省)によると、訴えの多い症状(有訴者率)の男性の1位は腰痛、女性では1位肩こり、2位腰痛となっています(図1)。
 

 
どんな病気で通院しているか(通院者率)でも腰痛は男性の4位、女性の2位と日本人の持病の上位を占めています(図2)。
 

 
 
腰痛とはどんなもので、どのようにすればよいのか。整形外科学会が監修した「腰痛診療ガイドライン」(図3)を引用しながら考えてみましょう。
<定義>

そもそも腰痛とは

 早速、腰痛診療ガイドラインの初めのページを開いてみると、なんと「腰痛の定義で確立されたものはない」とあります。このガイドライン大丈夫かなっと思ってしまいますが、一応、次の行に、一般的には一番下のあばら骨とお尻の間に起きる痛みと定義される、となっています。大体、なんとなくいつもイメージしているもので間違いではなさそうです。
ついでに、急性腰痛は発症から4週間、慢性腰痛は発症から3か月以上、その間が亜急性腰痛と定義されています。
 

腰痛の原因は大半が原因不明?

 腰痛は80%以上が、原因が明らかではない非特異的腰痛だといわれています。つまり、レントゲンを撮っても、MRIを撮っても、はっきりした異常がない人が8割以上いるということです。

 

       図3

<疫学>

仕事と腰痛は関係がある?

日本の有訴率は、運輸71-74%、清掃69%、介護63%、看護46-65%、事務42-49%、保安42%、技能職39%、建設29%という報告があります。やはり運輸、清掃、介護、看護などで高くなっています。さらに職場のストレスは腰痛の発症と、その治り具合に影響するといわれています。
 

腰痛の原因は運動不足?

運動不足は腰痛の危険因子といわれています。喫煙も危険因子です。肥満はなんと、腰痛に影響を与えるという証拠はありません。
また、腰痛には精神的要因、特にうつ状態が関与しているといわれています。
 

腰痛は自然に治る?

腰痛の多くは1か月程度で、急速に改善するといわれています。しかし約6割は12か月後も腰痛が残り、さらに約6割の人は腰痛の再発を経験するとのことです。
気を付けましょう。
 
<診断>

腰痛は重大な疾患が隠れていることがある?

腰痛はがんの転移や感染、骨折、内臓疾患など重大な疾患が隠れていることがあります。以下の項目(危険信号)が当てはまる場合は要注意といわれています。
 

  • 20歳以下または55歳以上
  • 時間や活動性に関係のない腰痛
  • 胸部痛
  • がん、ステロイド治療、エイズ感染の既往
  • 栄養不良
  • 体重減少
  • 広範囲に及ぶ神経症状(主に下肢のしびれや痛み、脱力、排尿排便感覚などの異常のことを言います)
  • 構築性脊柱変形(姿勢が悪いのと違い、本人が気を付けてもまっすぐにならない状態)
  • 発熱

 

検査は必ず必要?

 上記9項目に当てはまらなければ、必ずしも、レントゲンなどの検査は必須ではないといわれています。
 危険信号がある場合、神経症状を合併している場合は、MRIが有用であるとされています。
 


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<治療>

腰痛に安静は必要?

安静は必ずしも有効な治療法とは言えないとされています。
急性腰痛に対して,痛みに応じた活動性の維持はベッド上安静より疼痛を軽減し機能回復させるのに有効だったとのことです。
 

腰痛に対して薬物療法は有効?

これはもちろん有効です。
最近では、単純に痛み止めではなく、いろいろな薬が出てきており、選択の幅が広がっています。
<急性腰痛>
第1選択:非ステロイド性抗炎症薬、アセトアミノフェン
第2選択:筋弛緩薬
<慢性腰痛>
第1選択:非ステロイド性抗炎症薬、アセトアミノフェン
第2選択:抗不安薬、抗うつ薬、筋弛緩薬、オピオイド
 

腰痛に対して物理・装具療法は有効?

温熱療法は急性・亜急性期腰痛には短期的に有効といわれています。
経皮的電気刺激療法は、有効か無効か一定の結論がない。(良いとも悪いとも言えないということです)
牽引療法は有効性をしめす証拠が不足している。(有効ではないわけではなく、今のところはよくわからないということ)
コルセットは機能改善に有効であるとされています。
 

腰痛に対して運動療法は有効?

急性(4週未満)腰痛には効果なし
亜急性期(4週―3か月)に対する効果は限定的
慢性期(3か月以上)に対する効果は高い、とされており、
運動の種類による効果の差は不明、とのことです。
運動療法は週1-3回、10-12週間継続が良いといわれているが、現時点では十分なデータがないとのことです。
 

腰痛に神経ブロック、注射療法は有効?

腰痛に対して、椎間関節注射、脊髄後枝内側枝ブロックは有効である。
神経根性痛に対して、腰椎硬膜外注射、神経根ブロックは短期的効果がある。
と言われています。(難しい言葉が並んでしまいましたが、正確に狙ったブロックは比較的有効ということのようです。)
 

腰痛に固定手術は有効?

重度の慢性腰痛に対して、脊椎固定術は疼痛軽減と機能障害の軽減する可能性がある、と言われている。(これはリスクも伴うため、難しい選択です)
 
<予防>
運動療法は腰痛の予防に有効である、とされています。
コルセットの腰痛予防効果は、一定の見解がない。(これも効果がないと言っているわけではなく、今のところどちらともいえないということです)
職業性腰痛では、腰痛発症後も仕事内容の変更などで早期に復職することで、腰痛の遷延や身体障害を予防でき、病休の長期化を防ぐ、とされています。
 
最後に
ガイドラインは、世の中に出回っているいろいろな報告の内容、信頼性などを精査してまとめたものです。相反する結果の報告があったり、証拠が不十分だったりするものも多く、意外によくわからないことが多いのが事実です。
<診断>のところであげた、危険信号を見逃さないようにすれば、大きな間違いはないものと考えます。気になることがあれば、医師に相談してみてください。
 
 

参考文献
平成25年国民生活基礎調査の概況 
腰痛診療ガイドライン 2012 
 

千葉 克司 (ちば かつし)


出身地  岩手県
最終学歴 山形大学医学部卒業 
職歴   平成17年10月済生会山形済生病院入職
現職   整形外科診療副部長
学会   日本整形外科学会〔専門医・脊椎脊髄病医〕
     日本脊椎脊髄病学会〔脊椎脊髄外科指導医〕 
     日本整形外科学会
     〔脊椎内視鏡下手術・技術認定医(3種)〕
 
 
 


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