• 閉塞性動脈硬化症(ASO:Atherosclerosis obliterans)
  • 下肢末梢動脈疾患(PAD:Peripheral arterial disease)

病気の概要

下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)は、主に動脈硬化を基盤として生じる下肢の血行障害です。近年、下肢末梢動脈疾患(PAD)という名称がほぼ同義語として用いられることが多くなりました。ASOの発症に影響を及ぼす主な危険因子として加齢、糖尿病、喫煙が特に重要であることが知られています。また、慢性腎不全や透析治療はASOの病状の悪化に強く関与しています。

ASOの原因である動脈硬化は病理学的に粥状硬化、中膜硬化(メンケベルグ硬化)、細動脈硬化の3つの型に分類されます。下肢ASOは粥状硬化により発症しますが、糖尿病や血液透析などが関連した場合には、中膜硬化症や細動脈硬化症も関与し下肢虚血の病態の悪化を引き起こします。

動脈硬化症の初期には動脈内腔のもっとも内側に存在する血管内膜(内皮細胞)の変性が生じます。

本来、内皮細胞は血管の拡張・収縮の調節や血小板凝集能の調節、血管新生や血管透過性などの血管機能の調節を行っています。しかし、糖尿病や喫煙などの危険因子に血管がさらされると、血管内皮機能の障害が生じるため、血管の過剰な収縮や血小板凝集能亢進による血栓形成傾向などが引き起こされます。

さらに動脈硬化が進行すると、内膜下層にコレステロール(酸化LDL)や炎症性細胞が浸潤・蓄積して粥腫(アテローマ)を形成します。アテローマは徐々に血管内腔に飛び出してくるため、次第に血管の内腔が狭くなり最終的には閉塞(血管が詰まる)に至ります。また、アテローマは時に破裂を起こして、表面に血栓(血液の塊)を形成することにより、急な動脈閉塞による血行障害を引き起こすこともあります。一般的にはアテローマによる下肢動脈の閉塞はゆっくりと進行することが多く、その間に側副血行路(閉塞した部位の中枢(上)から末梢(下)に血液を送る新しい血行路)が発達します。

従って、この側副血行路の発達の程度により下肢動脈閉塞による下肢症状の程度は異なります。側副血行路が高度に発達している場合には動脈が閉塞していても無症状である場合があります。軽度から中等度の症状としては、下肢の冷感や間歇性跛行(歩行による下肢の疼痛・休息により改善する症状)を呈してきます。

さらに血行障害が進行すると下肢の安静時痛が出現し、さらには小さな傷がきっかけとなり足の潰瘍や壊疽に陥ります。潰瘍や壊疽は適切かつ迅速な診断と治療を必要とします。血行再建などの様々な治療が奏効しない場合には大きな範囲での下肢切断を余儀なくされる重篤な疾患です。

動脈硬化症は全身性の疾患です。そのため、下肢ASOを発症した場合には他の部位の動脈にも同様の虚血性疾患を併発している可能性が高いと考えられます。特に心臓の冠動脈や脳血管疾患は生命に関わる重要な疾患でありますが、ASOの患者さんの約50%前後において冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)が併存し、さらに約30%前後で脳血管疾患が併存していることが知られています。

従ってASOに対する治療を施行する際は、心血管疾患や脳血管疾患の併存に関しても精査を施行し、治療の優先順位を考慮した上で治療方針を決定することが重要です。

下肢動脈の名称とASOの好発部位

好発部位

①腸骨動脈領域 ②大腿動脈領域 ③下腿動脈領域

腹部の大動脈は臍(へそ)の高さにおいて左右の2本の動脈に分かれます。これを総腸骨動脈と呼びます。さらに総腸骨動脈は内腸骨動脈と外腸骨動脈に分かれ、外腸骨動脈が骨盤内を下行し鼠径部(足の付け根)に至ります。同部位で、総大腿動脈という名前に変わります。総大腿動脈は、さらに浅大腿動脈と深大腿動脈に分岐します。浅大腿動脈は大腿部を下行し膝関節上で膝窩動脈に至ります。膝窩動脈は膝下部において下腿の3本の動脈(前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈)に枝分かれし、足関節部位から足部に血液を送ります。

ASOによる下肢動脈閉塞の好発部位は、①腸骨動脈領域、②大腿動脈領域、③下腿動脈領域の3か所があります。

下肢閉塞性動脈硬化症の症状と重症度:フォンテイン分類(Fontain分類)

下肢虚血による症状の程度により、下記の4段階に分類されます。

分類症状
1度 冷感や下肢のしびれ
2度 歩行により下腿(ふくらはぎ)が痛くなり、立ち止まって休むと症状が改善し、再び歩行することができる(間歇性跛行)。200m以下の歩行で症状が出現する場合、比較的下肢虚血が重症である可能性があります。間歇性跛行の診断においては、腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの神経疾患によって生じる神経性間歇性跛行の鑑別が重要です。
3度 さらに下肢の血行障害が進行すると、歩行や運動しなくても常に足が痛くなり、夜も眠れなくなります。足が壊疽(えそ)(腐り始める)前兆の症状であり重篤です。
4度 足の小さな傷がなかなか治らず、潰瘍・壊死に陥ります。強い疼痛を伴う場合が多く、壊死では足趾や外くるぶしなどの皮膚が黒く腐ってきます。

下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)の診断 治療の方法

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