足の潰瘍(かいよう)・足の壊疽(えそ)

(1)下肢の血行障害を伴う足潰瘍・足壊疽
(2)下肢の血行障害を伴わない足潰瘍・足壊疽

足の潰瘍・壊疽

足に生じる"きず"はその深さによって、①びらん、②潰瘍、③壊疽に分類されます。びらんは皮膚の浅い層(表皮)までの欠損で、潰瘍は表皮の深層にある真皮まで及ぶ組織の欠損です。さらに血行障害や重度の感染、神経障害等により皮膚および皮下組織、筋肉などの組織が壊死に陥り黒色や黄色に変化した状態を壊疽と呼びます。これらの"きず"は、原因の特定と適切な治療がなされない場合には、化膿性関節炎や骨髄炎などにより下肢の大切断が余儀なくされたり、敗血症などによる多臓器不全にて生命に関わる病状に陥る可能性があります。従って、たとえ小さな"きず"であっても治りが悪い場合には適切な診断、治療を受ける必要があります。

特に血行障害の有無は、治療方針の決定において非常に重要であります。

下肢動脈の血行障害を伴う足潰瘍・足壊疽
重症下肢虚血(CLI:Critical limb ischemia)

  1. 下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)
  2. 糖尿病+下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)
  3. 透析+下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)
  4. 膠原病や血管炎に関連した壊疽

足潰瘍や足壊疽の重要な原因は下肢動脈の血行障害です。下肢動脈の血行障害を生じる疾患は、他項にて述べたように下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)をはじめ様々な疾患があります。いずれの原因にせよ下肢血行障害を改善しない限り、足潰瘍や壊疽を治癒に導くことは困難です。下肢動脈の血行障害による足潰瘍・壊疽の特徴は、強い安静時痛と乾燥、冷感を呈した創で、足趾などが黒色化しミイラ様になることもあります。虚血性潰瘍・壊疽の好発部位は足趾や踵、外果(外くるぶし)などですが、靴ずれや外傷などの小さな傷から生じることが多いと考えられます。

さらに下肢動脈の血行障害の病態を悪化させる疾患として、糖尿病や慢性腎不全(血液透析)などが併存している場合は、下腿以下での末梢動脈での血行障害や神経障害による知覚鈍麻、免疫機能の低下や動脈の高度石灰化などの問題が併存するため、病状は悪化しやすく、治療は困難を呈します。

下肢動脈の血行障害を伴わない足潰瘍・足壊疽/糖尿病性足病変

糖尿病足病変は、足皮膚の乾燥、角質増加、白癬症の合併、爪周囲炎、蜂窩織炎、潰瘍などの皮膚病変を呈し、最終的には足の壊疽に陥り切断を余儀なくされる糖尿病の重症合併症の一つです。糖尿病足病変の発症には、糖尿病による細小血管症(毛細血管や細動脈の障害)による足の微小循環の障害や末梢神経障害、さらに感染症が関与しています。糖尿病により毛細血管や細動脈の周囲組織において様々な代謝障害が引き起こされます。この組織障害により血管透過性の亢進による浮腫や血管内から組織への白血球の遊走や反応性充血などの感染防御に関わる機能が低下し易感染状態となることが知られています。また、糖尿病性神経障害による神経障害も糖尿病性足病変の発症における大きな要因です。末梢神経障害を発症すると、足のしびれや無知覚により足の外傷を負いやすくなります。さらに痛みを感じないために傷を負ったことに気がつかず、病状が深刻な状態になるまで放置される場合もあります。さらに神経は知覚のみならず、神経性血管弛緩反により動脈血流の調節も担っていることから、糖尿病性足病変の病態悪化に深く関与しています。

糖尿病性足壊疽は、痛みを伴わない湿潤(浸出液の多い)病変で感染症を伴っていることが多く、悪臭を放ち周囲組織に発赤や腫脹を伴うことが多いのが特徴です。足底部から発症することが多く、足の外傷や白癬症などを基盤とした感染症から悪化することが少なくありません。さらに、糖尿病による易感染性により骨髄炎などの深部の感染を併発していることも多く見受けられます。

足潰瘍・足壊疽の診断方法

足潰瘍や足壊疽の原因の特定は、簡単ではありません。その理由は、前述した血行障害や糖尿病性足病変の要因が複雑に関連していることが多いためです。さらに患者さんの日常生活動作(ADL: Activity of daily living)の状況も潰瘍や壊死の発症に強く関与しています。従って、足の潰瘍あるいは足壊疽の発症には①動脈血流の障害(原因は様々)、②糖尿病性足病変の関与、③外傷(けが)、④寝たきりや同一体位による局所の圧迫による褥創(床ずれ)の発症、⑤感染などの要因が相互に関連しあって発症するものと考えられます。

また、原因の特定は治療方針の決定や治療後の再発予防のために大変重要です。
上記の要因の特定のために下記の診察や検査を施行します。

  1. 下肢動脈の血行障害の評価と重症度の評価
  2. 基礎疾患の評価:糖尿病・慢性腎不全・心疾患・脳梗塞・高血圧・脂質代謝異常
  3. 生活習慣やADLの評価:喫煙習慣・飲酒習慣・日常活動度の評価・家族構成など
  4. 感染症の評価:創部培養・血液培養・単純X線・MRIによる骨髄炎の評価など
  5. 疼痛の評価:安静時疼痛の程度、処置時の疼痛の程度
  6. 退院後のサポートの評価:退院後の治療継続のための患者サポート体制の評価

足潰瘍・足壊疽の治療方針

足壊疽の治療における最大の目標は下肢の救済と虚血性疼痛からの解放です。足壊疽の原因の特定と病状評価を適切に行うことにより救肢するべき下肢を切断回避することが重要です。一方で、足関節より近位に至った壊疽や骨髄炎などの深部感染症に至った場合、あるいはガス壊疽菌などの生命にかかわる重症感染症に陥った場合には、救命の目的において下肢の大切断を選択せざるを得ない場合があります。

足潰瘍・足壊疽における救肢を目的とした治療方針は、その原因として下肢動脈の血行障害が関与しているか否かによって二分されます。下肢動脈の血行障害が足壊疽の主要因である場合には下肢血行再建が必須となります。下肢の血行再建としては、バイパス手術や血管内治療、薬物療法などがありますが、潰瘍や壊疽に陥った組織を治癒に至らしめるためには多くの血流が必要であるため、自家静脈などを用いたバイパス手術が重要な手段の一つとなります。

血行再建などにより動脈性血行障害の問題が除去されれば、適切な創傷処置を実施することにより、下肢切断が回避される可能性が高いと考えられます。適切な創処置としては、第1に創底部の清浄化が必須です。血行再建により健常組織(生きている組織)と壊死組織の境界が明瞭化されます。この時点で壊死した組織を切除(デブリードマン)していきます。壊死組織の除去には、外科的に壊死部分を切除する方法と軟膏処置により緩徐に除去していく方法があり、創部の状況などにより適切に判断する必要があります。

第2の段階として良性肉芽組織の増生を促します。創底部の清浄化が進むと壊死組織が良性肉芽に置き換わってきます。この際、肉芽の増生を促すために多く用いられる治療手段が、局所陰圧閉鎖療法(Negative Pressure Wound Therapy: NPWT)です。具体的な方法としては、まず壊死により組織欠損に至った部分に治療用のスポンジを充填し表面をフィルム被覆剤により密閉します。一部に吸引用のコネクターを貼付して持続的に50から125mmHgの吸引圧でスポンジと創表面に陰圧をかけることによって肉芽組織の増生を促します。陰圧による治療効果としては、感染性老廃物や余分な浸出液の吸引除去と浮腫の軽減、さらには創部血流の改善による肉芽組織形成の促進が挙げられます。また、肉芽組織の増生を促すための薬物療法(線維芽細胞増殖因子:basic fibroblast growth factor:bFGF)などを補助的に使用する場合も多くあります。

組織欠損部分が良性肉芽組織で覆われた後、創傷治癒の第3段階に移行します。肉芽組織の表面が上皮(皮膚)で覆われることを上皮化と呼び、創表面全体が上皮化した時点で創は治癒に至ります。上皮の欠損部分が比較的小さい場合は、創縁からの上皮の新生を促して保存的加療を継続しますが、欠損が広範囲の場合は、健常皮膚から採皮を施行し植皮術を行う場合もあります。

一方で、骨や筋肉、腱などを含む広範囲での組織欠損の場合には、遊離皮弁や遊離筋皮弁などの手術を考慮する必要があります。

足潰瘍・足壊疽の治療後の経過

足潰瘍・壊疽は非常に重篤な疾患であり、上記加療により下肢救済がなされた後も潰瘍の再発や新たな病変の出現の可能性が高いと考えられます。

足潰瘍治療後の足変形による靴ずれや胼胝を契機に発症する場合や、下肢動脈血行障害の悪化などによる再発は十分考慮しなければなりません。従って装具(足底板など)による歩行時の足変形の回避やフットケア(皮膚の清浄化、乾燥予防、足白癬回避、爪管理など)を定期的に実施して、足潰瘍の危険因子を除去していくことが大切です。

さらには、ASOや糖尿病などの基礎疾患が進行しないように生活習慣を正していくことも重要です。これらの管理においては患者様やご家族様、医療従事者(医師、看護師、介護師、理学療法士など)が一緒に取り組んでいくことが大切であり、そして継続していくことが必要です。

治療の経過(症例)

症例 1

症例 2

症例 3

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